感覚を回復するために必要な視点とは?
一般的にリハビリ場面で「感覚」というと、触覚とか、運動覚、温度感覚などに分けて考えることが多いです。これらの感覚が鈍いかどうかを検査することもあります。
リハビリをする時に、感覚を回復するために身体を刺激して感じるように働きかけたりします。例えば、ブラシで指先をこすって、それを感じてもらったり識別できるように練習する方法です。しかし中々回復するのは難しいのが現状です。もちろん回復期や急性期の人は回復していく人も比較的多いですが、僕が担当している人は慢性期という、長年そのような症状を持った人はより回復は難しいと思います。
これも一つの方法でありますが、「機能的な側面で感覚」を捉えると、もう少し違う解釈とアプローチが可能になります。
私たちは現実的に感覚を別々に感じているわけではありません。皮膚感覚は絶えず5点で、運動感覚は4点というような、常に感じ方が決まっている機械のようものではありません。感覚とは全て影響しあっているのです。一つの感覚が鈍いからといって、常にそうではないし、また逆もしかりです。状況や環境によって変わります。ちょっと考え事してたり、緊張しているだけで視覚も聴覚も皮膚感覚も鈍くなるなんてことは誰にもあることです。
私たちは感覚をロボットのように捉えて、それぞれの感覚を回復されるのではなく、機能的な側面で考えるならば、それはとても複合的だということです。
複合的と考えるとますます混乱しますね。感覚を分解して理解するのではなく、感覚そのものが総合して何をしているか、どんな機能かを考えると一つの事が言えます。
感覚の回復とは「実感」を伴う動きを獲得することです。
感覚とは、熱いや冷たい、固い、柔らかい、ツルツルしている、ザラザラしている、ぎゅーとなる、張りがある、などを含めて僕らは全て身体や周囲の「実感」を得るためのものです。
腕の感覚が鈍く、腕のイメージがあまりなかったり、貧弱なものなら、腕の感覚を高めるのではなく、逆転の発想で先に腕がある!!!!!!
と先に実感して貰えば自ずと感覚は後からついてきます。だって腕が明確にあるのですから感じずにはおれません。
こんな感じかな?あくまで画像なのでイメージですが、こんな手を実感してそうな人が感覚鈍い感じしないでしょう。
同じように脳梗塞などで、自分の腕がないと忘れてしまう人(失行や失認と言います)にもとっても有効です。実感できるのですから、忘れようがなくなってしまいます。
実感を伴うアプローチには、実感を伴ってもらう動きを提供することが非常に大切です。緊張や刺激というものではなく、質感や動きの詳細な変化を捉えること、そして質の高いハンドリングの能力を高めるのが、非常に大切です。