ぼちぼちでええやん。

人の動きについて根っこから理解したいと思ってます。シンプルラーニング提唱者、キネステティク理事、YOUTUBE「楽な動きの学習会」ブログは癖が強い記事が多めです。

認知症は過去よりも現在に焦点を

認知症のケアでスタンダードなのは、その人が過去にどんな事が好きで、どんな趣味があったか?など、その人の過去の情報を集めるという事だと思います。

 

この情報を集めることを否定しているわけではありません。過去に何をしていたか知ることで、アプローチの幅も広がります。私自身も過去の情報も参考にすれば助かることもあるので、情報があれば取得していきます。

 

ただし、過去の情報は、過去の情報でしかありません。今のその人は、過去ではなく、今を生きているわけです。

 

過去に好きだったものが、今も好きだとも限りませんし、過去の人物像が今も同じとは限りません。認知症なんて関係なく何かの役割の中で自分を抑えた人もいるでしょう。

 

例えば、編み物がこの人は好きだったから、編み物でアプローチやケアに取り入れましょう。というのは良く聞く話です。

 

しかし今の状況を考えると、編み物をするための認知機能は低下してますから、かなり神経がすり減る作業になってきます。認知機能のレベルによっては単純に苦痛になることもあります。もちろん個人差はあります。

 

また自分の子供など大切な人にセーターを着てもらいたい事、もしくは好きな友達と一緒に編み物をすることが楽しくて、たまたま編み物という活動になっていて、活動はなんでも良いかもしれません。

 

それなのに、ただ編み物好きでしょ?って編み物をする機会を作っても、それは本人のもとめてた編み物ではなく、人から言われたことをこなすための作業になるのです。仲の良い友達と編み物をしたいけど、知らない人とはしたくないかもしれません。

 

こんな例からも、いかに過去の情報をそのまま相手に当てはめてケアすることが、押し付けになるか想像できるかなと思います。

 

そもそも認知症じゃなくても、状況により人は変わります。嫌いなものが好きになったりするし、その時は気分で変わる事もあります。

 

では、押し付けないためにはどうすれば良いのでしょう??

 

それは今のその人の応答を把握することです。編み物が今のその人にとって喜ぶかどうかは、今の表情が楽しそうかどうか、笑顔かどうか、充実した時間を過ごせてるかどうか。それは過去の情報ではなく、今ここにあるものです。

 

どう応答するかは、やはりやってみないとわかりません。逆に言えば、やれば、その時の応答が答えになるわけです。

 

また、前回は喜んでたけど、今回も喜ぶとは限りません。例えばトイレに行きたくなってるかもしれないし、そんな気分でないかもしれません。

 

認知症ケアで大切なのは、今のその人と関係性を持つことです。今のその人と向き合うからこそ、目の前の人をケアできるのです。それは他の症状にも言えることですが、過去を忘れていく認知症ではより、今ここに生きるようになるのです。

 

仮に嫌いな食べ物でも、今は食べれることもあるかもしれません。レクが幼稚だと思ってても、今は喜ぶかもしれません。認知機能が低下したからそうなったのだと思われるかもしれませんが、過去の自分が正しくて、今の自分が間違ってるとなぜ言いきれるのでしょう。人は変わるという、あたり前の事を、むしろ許容できないほうが認知症として型にはめて扱ってるように思います。

 

誤解を恐れずあえていうなら、過去の自分ではなく、つねに今の自分が正しいのです。だから過去ではなく、今の自分と向き合うのです。機能が高い過去の自分ではなく、機能が低い今の自分が正しいのです。機能が高い、低いなんてものは、物差しの1つにしかすぎません。機能が高かろうが、低かろうが今を生きているのですから。

 

視点を変えれば過去の情報がなくても、試行錯誤を続けて、向き合えばケアをしていくことも、アプローチしていくことも可能です。

 

過去に情報がなくても、目の前には今のその人という膨大な情報があるのです。そして、アセスメントシートでもなく、記録用紙でもなく、今の目の前の人に答えがあるのです。