ぼちぼちでええやん。

人の動きについて根っこから理解したいと思ってます。シンプルラーニング提唱者、キネステティク理事、YOUTUBE「楽な動きの学習会」ブログは癖が強い記事が多めです。

Q.座位姿勢が反ってしまって、ずり落ちそうになる人の車椅子のセッティングは??

本日はちょっと趣向を変えて質問形式にしています。実際に現場であった内容をもとに構成しています。

 

Q.

80代女性。いつも反りが強くて、車椅子からずり落ちそうになります。在宅等では滑り止めシートや安全ベルトで固定しているみたいです。座り直してもすぐにズレてしまいます。なんとか車椅子にちゃんと座れるようにして欲しいです。

 

※状態として、意思疎通は言葉では難しい。会話はできないが快、不快の表現は表情や仕草から表現できる。

 

A.

まずタブーなのは、良い姿勢にしようとしてはいけません。ここで言う良い姿勢とは一般的に背中が起きていて、骨盤が前傾で一見しっかり座っているような姿勢のことを言います。

 

車椅子を姿勢で合わそうとすることが世の中にはとても多いですが、実は車椅子は姿勢で合わせるものではありません。このケースの場合、今の本人は反り返るのですが、それを矯正しようとして曲げた姿勢はとっても苦しいのです。

 

あなたは座っている時に、上からぐっと抑えつけられるとどうなりますか?当然しんどくてより反り返りをしようと反発します。人は無理に姿勢を矯正すると、それに反発するように抵抗するか、逆に疲れきってしまいます。

 

つまり姿勢を正そうとすればするほど、反り返りは強くなります。これは悪循環です。今でも車椅子があっていないために、反り返るという癖が強くなっているところに、より正しい姿勢に抑えつけると、窮屈になりよけに反り返る癖で対処します。それではまず上手くいかないでしょう。

 

Q.

ではどうすればいいのですか?

 

A.

まず考えなければいけないことは、姿勢で車椅子を合わせないなら、何をもとに車椅子を調整するのか?と言うことです。

 

この答えは実はすごく単純です。

 

答えは『動き』です。

姿勢ではなく、どのように車椅子で動いているかを見て、本人の動きに添いながら合わせていく必要があります。

 

Q.具体的にどうすれば??

 

A.

答えは簡単です。反った姿勢を無理矢理曲げてよい姿勢にして、余計に反り返るならば、逆をすればいいのです。車椅子の背もたれを少し反りかえった座り方になるように調整します。大切なのは、反り返りを許容し、反り返っている動きを楽にしてあげることです。

 

ただし加減は大切です。あまりやりすぎると反り返り過ぎる状態になりますから、やはりずり落ちそうになります。本人がしているよりもやや小さくすることがおススメです。

 

(実際やってみる)

 

Q

不思議です。すごいしっくり座るのですね〜

本人もとても楽そうです!!

 

A

他の反っている人が同じようになるとは限りませんが、相手の動きを尊重しながら合わせると、本人も無理なく車椅子に適応できるのです。結果以前より随分楽に座れましたね。よく上半身も動いています。

 

A

ついでに車椅子が高くて、フットレストが高すぎて、本人は足をのせたくないみたいで、ブラブラだったので

フットレストの高さも変えました。

また一般的な高さよりもあえて低めにしています。

 

Q

それはなぜですか?

 

A

上半身と同じように

この人は足を投げ出し、反る姿勢が定着しているのです。

無理に標準と言われている位置にフットレストを合わせても

今度は足から押さえつけらている感じになり、苦しくなってフットレストから足を出そうとしていまうのです。調整しているうちにそんなことを観察しました。

 

ですから、押さえつけないように、一般的なセオリーより低くセッティングしています。多分見る人が見たら低い!!と怒られそうですが

この人を見る限りこれでオッケーでしょう。むしろ今のこの人にはこれが最適です。

 

Q

ほんとですね!足がちゃんとのせてくれるようになりました。本人もあまり違和感がないようです!!むしろしっくりきてるみたいです!

 

A

ちなみにこのセッティングは他に人には合いません。

他の人には、他の人の動きに合わせて調整する必要があります。

 

他の課題として今の車椅子が高すぎることで動きずらさはありますが

(座面が高いと、どうしても浅く座ってしまう。そしたらその時点で背もたれにもたれるとズッコケるような姿勢になりやすい。そうなると介助にて深く座る必要があります)

高さを変えると机や段差等の関係性も変わるため生活状態を把握してから変えた方がいいでしょう。今の状態だけ見て高さを変えるのではなく、生活全体を見据えて調整を慎重にした方がいいですね。

 

また今回上手くいっても

しばらく使っていると身体の変化や使い方が変わってきます。

 

楽に座っていることにより、過剰な反り座位が減少することも考えられます。その際はまた座り方に変化に合わせて車椅子を調整する必要があります。本人の身体の動きが変わることで、今の車椅子が合わなくなるなんてことも考えていく必要があります。つまり一度セッティングしたから終わり!!というものではありません。

 

Q車椅子の調整は難しいですね〜

 

A

確かに難しいですが、本人の『動き』に合わすという視点で試行錯誤を重ねると案外上手くいくことが多いです。

 

また一度に完璧に合わせる必要はありません。『動き』にあわせるということはその人がどのように車椅子の上で動き、生活しているかを把握することです。

 

肘置きの高さ一つ合わせるにしても、本人が使ってくれるかどうかは、観察しないとわからないことです。同じ姿勢で同じ体格の人がいても、触り心地や生活状況で一方は肘置きを使ったり、一方は肘置きを全く使わないことも普通にあります。

 

こういったことは時間を使って観察したり、やってみて、本人の応答を見て、また調整かけてということをすることが必要です。特に車椅子を利用している人は意思疎通が測りにくい人もたくさん使っています。言葉で聞けない分、どんな風に座っているかというメッセージが大切です。決して姿勢という止まってるものに合わせないようにすることです。機能的な座位とはよい姿勢ではなく、色んな動きが座ってできるということです。つまり車椅子でゴソゴソできなければいけません。

 

姿勢で合わせて、パッと調整すればかっこいいですが、僕はそんな風にはできません。じっくりと本人の動きと向き合いながらしていくしかできません。だけどその方が姿勢で合わせるより、断然本人が楽に座ってくれることが多いのです。そして楽に座っていれば、無駄な力も減り本来の自然な動きも増えていくのです。

 

利用者さんも本人も車椅子の新しい調整に適応するための時間も入ります。ですから少しずつ無理やなく適応できているかの配慮が必要です。

 

A

わかりました。車椅子一つでも時間をかけて、本人の動きを尊重する必要があるのですね。そして、よい姿勢を相手に押し付けないと。本人の動きの傾向に沿いながら合わせていくのですね。今後も様子を見ていきます。ありがとうございました。

 

※今回の話はテクニックのように捉えないでください。同じように座位姿勢が反った人でも、また本人の動き方や応答の具合によって変えていく必要があります。

 

だけど『動き』を学ぶとこんな風に車椅子を合わせられますよ〜と知って欲しかったのです。あくまでも本人に沿うということがとっても大切なのです。

 

動きの学習にも様々な考え方があります。例えばキネステティクで学習が浅い人は両坐骨に重さをかける座位が良い座位だと教えることがあります。これは前に書いた内容の典型的な概念の使い方の誤りです。

※参照記事

キネステティク概念(言葉)の使い方に注意!! - ぼちぼちでええやん。

 

常に両坐骨に重さをのせて座るととっても大変なのです。僕らはそんな風に座っていません。自分自身の座位に注目してください。坐骨にかかる圧を絶えず色んな方向に切り替えながらゴソゴソと動いています。もちろん両坐骨にのせることできたら楽にはなりますが、言葉が先行してしまうと大変苦しいのです。

 

同じように寝返りは足の裏という面を使わなければいけない。だから膝を立てて寝返りすることが大切だといっても、実際真冬の分厚い布団で足を寝返りもままならない人が足を立てるってどれだけ大変か。

 

キネステティクの概念も時代が変わりつつあり、言葉をあてはめて動きを見直す段階から、本人の動きに添い言葉を上手に使う段階にシフトしようしています。言葉に正しさを求めるのではなく、言葉を柔軟に使い本人の動きに添う、新しい世代の幕開けです。

 

車椅子のセッティングも同様です。このように座らなければならないという押し付けが、結果車椅子との窮屈さ、不適応を作るのです。いくら楽に座れる考えでも、押し付けると楽ではないのです。

 

これらを解決するポイントは『言葉(考え方)の使い方』を学ぶということです。

 

言葉の使い方を学ぶことは、言葉に目を向けるのではなく、使う人そのものに目を向けるということです。正しい考え方や言葉を追いかけているうちは使い方を学ぶことはできません。目の前の人の動きに向き合うには、触れた相手の動きを感じるというスキルが必要です。何故ならば相手と向き合えず、変化もわからない状態なら言葉を押し付けるしかないからです。

 

ですから、触れるスキルが大切だとよく言っているのです。言葉を上手く使うためにも。

 

言葉の使い方を学ぶことは、言葉を使う私たちそのものに向き合うこと。私たち動きに絶えず寄り添って言葉を使うこと。

 

そのように学ぶと車椅子の調整一つとっても、思いのほか豊かな関わりができるのです。こんな新しい世界を覗いてみませんか??

 

日本シンプルラーニング協会

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日本動きの学習協会(JMA) キネステティク

ホーム(コース日程) - JMA (日本動きの学習協会)キネステティク

 

ここで学習できますよ〜

 

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車椅子は姿勢を強制する器具ではない - ぼちぼちでええやん。